つい先日、一人で道を歩いていた時のことです。
寸借詐欺に遭いかけました。
私の場合は、お金を騙し取られることもなく、
相手もすんなり引き下がったので実害はありませんでした。
ですが後で調べてみると、
意外に金額が大きかったり、
深刻な被害につながったりするケースもあるようです。
多くの人に、より広く知っていただきたいと思い、記事にさせていただきます。
「すみません、駅までの道を聞きたいのですが・・・」

気温は低くても日差しは温かく感じるようになった頃のこと。
運動不足解消のために近場の用事は徒歩で済ますようにしています。
車の通りは多いけれど、歩行者は自分以外にほとんどいない。
そんな道路脇を歩いていた時でした。
「すみません、駅までの道を聞きたいのですが」
60~70歳くらいの男性が話しかけてきたのです。
「○○駅までは、この道をまっすぐ行けばいいんでしょうか?」
「はい、そうですよ」
そう答えた私に、なぜか突然ポケットから小銭入れを取り出し、
空っぽの中身を見せてこのようなことを語りはじめました。
友達(親戚?会話の中でも一貫しておらず、混在していました)から電話を受けて、慌てて家を飛び出した。
慌てていたものだから、お金が入っていない財布を持って来てしまった。電話も身分証も持っていない。
友達のところは電車に乗らなければ行けない場所なんだ。
小銭入れの中もこの通りで空っぽ。
持ち合わせがない。
友達の家のある駅まで行きたいんだが・・・
お金がない・・・
困った、困った・・・
寸借詐欺に対してとった行動

こういう事を言うのもどうかと思うのですが、知らない人に絡まれることがよくあるんですよ。
スウェーデンを訪れた時には酔っ払いに絡まれたし、
オランダを旅行した時にはホームレスにお金をせびられました。
きっと、世界共通で気弱そうに見える顔なんだね。
だから、「ああ、ウソついているな」ってすぐにわかりました。
それでなくても、声をかけられたのは駅からは4キロほど離れた場所で、
すぐ横に通っている道路は市バスの通り道。
この地域に暮らしている市民、まして老人なら駅までバスを利用します。
財布にお金がないことはバス停で気付くはずなのです。
私は男性に対してこのように言いました。
「お友達のところへは電車で行かれるんですよね?
でしたら駅員さんに事情を話せば電車賃を貸してくれるはずです。
それか、警察でも衆接遇弁償費といって、ある程度お金を貸してくれる制度がありますよ」
衆接遇弁償費なんて言葉を知っていたのは『インベスターZ』という漫画を数日前に読んでいたから。
素晴らしきかなマンガ知識。
そして、次の一言が良かったのでしょうね。
「これから行こうと思っている場所の近くに交番があるんです。
よかったらそこまで案内しましょうか?」
私のこの言葉を聞いた男性は、小銭入れをすっとポケットに戻し、
「そうですか・・・それでは駅で借りることにします。
駅は・・・こっちで良いんですね?」
と言い、男性は駅とは違う方向に向かって歩いて行きました。
うん、これは完全に詐欺を狙っていたね。
寸借詐欺とは
ウィキペディアによれば寸借詐欺とは次のように書かれています。代表的な詐欺のひとつで、人の善意につけこみ小額の現金を借りるふりをして、騙し取る行為を指す。
小額とありますが、被害金額は1000円~数万円程度と様々。
他の人の事例も見てみましたが、私のケースも含め、以下のような特徴がありました。
●お金を貸してくれと自分からは言わない
●財布を「忘れた」「落とした」と手持ちがないことと、緊急性を強調する
●行きたい場所・目的地を明確に言わない
●みすぼらしい服装や言葉、表情で、ことさら同情を買おうとする
声を掛けられて「あれ、なんかおかしいかも・・・」と頭をよぎったなら、
絶対にお金を貸してはいけません。
たとえ「これくらいのお金なら、返ってこなくてもいいや」と思ったとしても。
寸借詐欺の被害に遭ったケース

寸借詐欺の被害に遭ってしまったケースを見ると、ひどく焦ったり落胆する様子に同情してしまい、
「お金、貸しましょうか?」
と自分から言ってしまう場合が驚くほど多いことに気付きます。
人の善意につけこむ、本当に卑劣な犯罪だな!
一度お金を出させればこっちのもの。
ましてや「貸しましょうか」という言葉を引き出せたなら尚のことです。
心理学では「一貫性の法則」や「フット・イン・ザ・ドア」と呼ばれる法則があります。
一度「Yes」と言ってしまうと、
後に続く要求が最初より大きなものになったとしても、
断るに断りきれない心理状態になってしまうのです。
ここで、「行きたい場所・目的地を明確に言わない」ことが効力を発揮します。
目的地をずらしていくことで、引き出すお金をより高額にしていくのです。
実際にあったケースでは、
「○○駅に行きたい」という話が
「△△方面に行きたい」という話に切り替わり、
次には「宿泊費がないから野宿せざるを得ない」となり
最終的には「次の日は仕事で××へ行かなければならない」
と話がどんどん大きくなり、
1000円くらいで済むと思っていたものが数万円渡すことになったというケースもあります。
また、
「手持ちにあるのはこれだけしかなくて・・・
もっと持っていればお貸しできるんですけどね~」
と言ってしまったばっかりに、
「コンビニでお金下ろせますよ!」
と言葉尻をとられ、本当に返ってくるのか怪しいと思いながらも、ATMでお金を下ろし、相手に渡すことになったなんてことも。
怪しい、というよりおかしい!変!
なんでお金下ろしてまで見ず知らずの人にお金を貸さなきゃいけないの!?
たとえ小額だったとしても、絶対にお金を貸してはいけません。
貸してもいいという素振りを見せることもしてはいけません。
相手はその一瞬を狙っているのですから。
狙われるのはお金だけではない!

寸借詐欺で盗まれるものは、お金だけではありません。
このようなケースも寸借詐欺にあたります。
知らない人が近づいてきて、あなたにこう話しかけます。
「すみません、携帯電話を貸していただけませんか?」
どうぞ、と咄嗟にあなたは携帯電話を差し出すでしょう。
わかった!
その携帯をひったくって、ダッシュで逃げちゃうんでしょ!
いいえ、違います。
どこかへ電話をかけるだけ。
ごく普通に会話をして、用が済んだ後に
「ありがとうございました、助かりました」と、あなたに携帯電話を手渡します。
相手はお礼を言ってそこから立ち去り、あなたはそれを見送る。
何ら問題のないように思えるこの光景。
しかし、電話をかけた先が問題なのです。
電話をかけた先は名簿屋です。
名簿屋のリストに、あなたの携帯電話番号が載ってしまったのです。
怖っ・・・!
この方法だと、名簿屋のリストに載ったなんて気づけないよ。
持ち主が確実にいる電話番号のリストは、使う者にとっては大変貴重です。
商品のセールスや金融の案内など・・・
最近、やたらと知らない複数の業者から着信がありませんか?
その前に、知らない人に携帯を貸したなんて覚えはありませんか?
寸借詐欺に遭ってしまったら

もちろん寸借詐欺も立派な犯罪です。
しかし、犯罪の中でも詐欺は特に立証が難しく、
ましてや被害金額の少ない寸借詐欺だと、まともに取り合ってくれる警察は少ないそうです。
検挙率を上げたい警察は、解決できなさそうな事件は扱いたがりません。
それに被害届を受理しても、捜査する義務は警察にはありませんので。
それでも、寸借詐欺に遭ったと気付いたなら、必ず被害届を出すようにしてください。
詐欺には常習性があるため、何度も同じ手口を使って詐欺行為を働きます。
同じ手口の被害届がいくつもなされれば、警察が捜査に動いてくれるかもしれませんし、注意喚起等の行動を起こしてくれる可能性もあります。
これは犯人逮捕や貸したお金の返却というためではなく、社会正義のため。
これ以上、人の善意を踏みにじる卑劣な犯罪による被害を増やさないようにするために、
被害届を出すようにしていただきたいのです。
まとめ
●寸借詐欺と気が付いたら、小額であっても絶対にお金は出さない●「交番まで案内しましょうか?」というように、自分はお金を貸さないという立場を明らかにしつつ、一筋縄でいかない人間だと相手にわからせる
●寸借詐欺に遭ってしまったなら、被害をこれ以上拡大させないため、警察に被害届を必ず提出する
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。