よくわからないもの、得体の知れないものには噂や都市伝説がついてまわります。
就職活動も、考えてみれば得体の知れない、よくわからないものですよね。
真偽不明の求人票
曖昧な採用基準
何が正解かわからない面接の回答・・・
今回は就職活動にまつわる都市伝説と、
その都市伝説を真に受けて就職活動に望んだ結果、
悲惨な末路を辿ることになったある男性の話を紹介します!
下手な怪談より怖い話かもしれませんね・・・
これから就職活動をする学生さんは必見です!!
この記事の目次
就職活動にまつわる都市伝説

サッポロビール
サッポロビールの面接試験のエピソードである。面接を受けに来たある学生が、奇妙なことに面接官の質問に対して何を聞かれても反応せず、無言で何も答えようとしない。
面接官が「なぜずっと黙っているのか?」と聞くと、
「男は黙ってサッポロビール」
と一言だけ答えた。
これは当時、三船敏郎が出演していたサッポロビールのCMの決めゼリフ。
個性的な回答で、その学生は内定を得たと言われている。
また、後に他の学生が真似をして面接で同じことをしたのだが、
「オリジナリティのない人間は必要ない」とそれ以降の学生は軒並み不採用となった。
森永製菓
森永製菓の面接で「当社のCMソングを歌って下さい」と言われた。「はい!それならわかります!」と
「チョッコレート、チョッコレート、チョコレートは…」
と歌いかけたところ、途中で明治製菓のCMソングであることに気付く。
そこで無理矢理「チョコレートは森永!」と歌い切ったところ、その学生は合格となった。
日産自動車
日産自動車の面接で「GNPとは?」と聞かれた学生が、緊張のために答えることができず、苦し紛れに「頑張れ・日産・パルサーです!」
と答えた。
やってしまった・・・と不合格だと思っていたところ、後日内定通知が届いた。
航空会社の入社試験
航空会社の入社試験を受けた学生のエピソードである。その学生は両腕を広げ、「キーン!」と言いながら旅客機の真似をして面接会場に入室した。
「着陸許可を願います!」
そう叫ぶ学生に、面接官は
「そのまま旋回しなさい」
と冷静に返し、学生は両腕を広げたまま退室していった。
野村證券
中にはいくつも内定をもらう学生もいる。入社できる会社は一つだけだから、それ以外の会社には内定辞退の断りの連絡を入れなければならない。
内定を辞退したいと企業まで出向いた学生を、担当者が「最後に食事でも」とレストランに誘った。
注文された品が配膳されるやいなや担当者は立ち上がり、突然料理を、学生の頭から浴びせかけ罵倒した。
そして、
「クリーニング代だ!」
と、紙幣を投げつけ去っていったという。
この話には、罵倒された学生が怒って担当者を殴り倒し、クリーニング代として渡された現金を「治療代だ!」と突き返すパターンも存在する。
このエピソードはなぜか野村證券とされる場合が多い。
面接試験の珍解答
●面接官からの「家業は何ですか」という質問に対し、「かきくけこ!」と大きな声で答えてしまった。
緊張の余り「か行」と勘違いしてしまったのだ。
●面接官から「あなたの座右の銘を教えてください」という質問に対し、
「右が1.2、 左1.0です!」と答えてしまった。
「座右の銘」を「左右の目」と勘違いし、視力を答えてしまったのだ。
●面接中、両手を組んで親指を回す癖を始めた学生に面接官が苛立ち、
「君はそれしかできないのか!」と注意した。
するとその学生は
「いいえ、逆にも回せます!」
と親指を回す方向を逆にして面接官に見せた。
結果、その企業から内定をもらうことができた。
個性的なやりとりの都市伝説 真相は・・・

都市伝説ですから、「信じるか信じないかはあなた次第」で締めておきたいところですが、
内定をもらった系の都市伝説は軒並みデマです。
サッポロビールの都市伝説などは、とある塾講師が著書でこのエピソードを載せていたために長い間実話とされていました。
しかし、2005年2月に放映されたTV番組で、サッポロビールの人事部長はこの噂を否定しています。
緊張のあまり、珍解答みたいな回答をしてしまった学生はいそうですが。
ミミズバーガーとか人面犬とか、どこか古い時代の香りすら感じさせる都市伝説。
今の若い人たちなら鼻で笑っちゃうようなエピソードですね。
しかし当時、とても鼻で笑えない恐ろしいことがありました。
就職活動の都市伝説を真に受けて面接に臨んだ学生がいたのです。
私が就職活動をしたのは10年くらい昔のこと。
今回紹介した都市伝説は、サークルの先輩から聞かされていました。
この記事のタイトルの「噂話を信じた男の悲惨すぎる末路」の「男」とは、この先輩のことなのです。
それでは、彼がどのような人物で、どのように計画して就職活動を進めて行ったかをお話しましょう。
就職活動の都市伝説を信じた男の悲惨な末路
サークルの先輩ってどんな人?
サークルの先輩(以下Tさん)について簡単にお伝えしておきましょう。- 関西にある某私大の文学部に所属 日本史専攻
- アルバイト経験 なし
- 資格 特になし(運転免許くらいは持ってたかも?)
- 趣味 パチンコ
- 好きなもの 演歌 仮面ライダー(昭和の)
- 文芸部に所属 飲み会や集まりには顔を出すものの、「小説を書く」という部活動そのものにはノータッチ
これだけの情報でも、相当絡みづらい人間であろうことは伝わると思います。
人柄はそれほど悪い人ではありませんでしたが・・・
ああ、でも基本”かまってちゃん”でしたね。
先輩の見た目が氷川きよしみたいな感じなら「演歌好き」も個性と受け止めてもらえそうですが、ゲゲゲの鬼太郎に出てくるモブキャラみたいな風貌でした。
それから重要な情報として伝えておかねばならないのが、在学中は教員免許取得を目指していたこと。
そして教育実習を申し込む土壇場のところで教員免許を諦めたということです。
つまり、Tさんは、
- 学生時代は打ち込んだものは特になく、サークルもアルバイトもしていない
- 暇があれば、親からもらったお小遣いをやりくりしてパチンコに興じる
- 世話になった高校の教壇に立ちたいんだ!と言っておきながら、怖気づいたのか、ギリギリのところで教員免許を諦めるという「逃げ」の選択を取る
- 在学中、教員免許取得に労力のほとんどを費やしていたため、自己分析や企業研究など、就職活動に必要な準備が全くできていない
という状態だったのです。
人のことを悪く言いたくないのですが、事実だから仕方がありません。
さらにTさんは「変わり者」と呼ばれたいのか、普通の人、大勢の人とは違う行動をとりたがる傾向がありました。
でもその違う行動というのも、ちょっとズレてるんですよね。
携帯電話を持たないことをポリシーにしたり(連絡つかないから周りが困るんだ・・・)、
気になる女の子に彼氏ができてから猛アプローチしたり。
就職活動への準備不足
変わり者と呼ばれたいための「こだわり」
これらの要因が、Tさんの最後の学生生活を黒く塗りつぶし、その後の人生まで狂わせることになります。
「我が道をゆく」という名の「大迷走」

学生の就職活動の解禁日などは、その年によって大きく変わります。
私が就職活動をしていたときは、概ね次のようなスケジュールで行われました。
●3年生
10月 大学が主催する企業合同説明会が始まる
選考や面接は年が明けてから
それまでに自己分析や業界研究などを行い、志望する業界や会社について考えておく
1月~ 個別で企業説明会が行われ始める
この月だと数はそれほど多くなく、学生は場に慣れるために顔を出しておくという感じ
2月~3月 就職活動が本格化し始める
マスコミ・金融・大手企業などはこの時期から選考が始まる
学生の方も「選考・面接に慣れておく」「内定が出ればラッキー!」くらいの気持ちで応募する
●4年生
4月~ メーカーや小売、その他の業種の選考が本格化
金融など、選考が早い業界を志望する学生には、何社も内定をもらう者が出始める
ゴールデンウィークまでに内定をもらえるかどうかが一つのリミット
内定の無い者は、中小企業・ベンチャーも視野に入れ始める時期
5月~ 半ばより公務員試験が国家一種から順に始まっていく
同時期に、教員を目指すものは教育実習に赴く
まだ内定の無い学生は”就活欝”に陥る
これ以降は企業が実施する夏採用、秋採用に向けて準備と覚悟を決めねばならない
人によっては夏休みがない状態となる
一応、冬採用もあるが、9月までには何としても内定をもらわなければなならない。
10月には下の学年の就職活動が始まるのだから・・・
ざっくりと書きましたが、このような流れに学生たちは身を委ねます。
その流れの中で、選考・面接の要領をつかみ、
大手から中小・ベンチャーまで広く志望企業を探し、
内定が出るまで、そして自分が納得するまで応募を続けるのです。
そしてTさんはというと・・・
なんと皆が大手に志望している時期に中小・ベンチャーを応募していました。
逆に、大手が優秀な学生を確保し終わり、内定なしの学生が中小・ベンチャーに志望企業を移した頃になって大手を志望し始めたのです。
通常の流れとは全く逆の行動でした。
「オレは大勢の他のやつらとは違う。オレはオレの方法で行く!」
と、おそらくTさんなりの考えがあっての行動なのでしょう。
しかし傍からは「大迷走」にしか見えません。
同期の先輩方からも忠告(警告?)を受けていたようですが聞く耳を持たず。
就職活動にまつわる都市伝説をTさんから聞かされたのはこの頃でした。
普通ならネタ程度の話、あるいは「ばかばかしい」と笑い飛ばすような話でさえも、
Tさんには「有益な情報」に見えていたように思います。
努力も準備もしていないのに結果だけは欲しい。
そんな人間は一発逆転に全てを賭けます。
事実、毎年一定の割合で、面接を一発芸で乗り切ろうと考える学生はいるらしいですからね
Tさんも、「男は黙ってサッポロビール・・・」みたいなノリで面接に臨んでいたのではないでしょうか。
大迷走の結果・・・

「有益な情報」と「我が道をゆく」を武器に就職活動を行ったTさんですが、
案の定、なかなか内定をもらうことができませんでした。
夏休み前から”就活欝”に陥ってしまったTさん。
面接で自分を貶めるネガティブ発言を繰り返してしまい、面接官から怒られたという話を笑いながら聞かされました。
もう完全におかしくなっています。
サークルの同期は、Tさん以外全員内定が出ていましたから、気まずさと恥ずかしさからサークルにも顔を出せません。
就活浪人は、経済的に親御さんが許してくれないらしく、リミットは近づくばかり。
また、並行して卒業論文も仕上げなければなりません。
学内で顔を合わせる度に自虐と自嘲を繰り返していました。
結局、内定をもらうまで年末直前までかかってしまい、最後の方は一つ下の学年に混じって説明会に参加していたといいます。
最終的に内定をもらえたのはパチンコ店の店員としての採用でした。
まあ趣味がパチンコだからいいのかな・・・とも思えるのですが、
卒業後に同期の先輩方で集まりがあり、そこでは職場の愚痴を散々口にしていたそうです。
その集まりを最後に、Tさんとは連絡が取れなくなっているのです。
おそらくパチンコ店は、Tさんが希望する第一志望の会社ではなかったでしょう。
それでも夏休みをつぶし、欝に陥り、下級生に混じりながらも頑張って選んだ会社です。
しかしその結果は愚痴だらけの職場で現在は行方知れず。
こういう言い方は失礼かと思いますが、悲惨な末路だといわざるを得ないでしょう。
履歴書の価格っていくら?

突然ですが、「履歴書の価格」っていくらくらいだと思いますか?
文房具店で3枚セットで600円、
それに証明写真を貼るから・・・
いえいえ違います。
履歴書の購入金額ではなく、雇用する会社側から見た「履歴書の価格」です。
答えは2億円です。
日本人の生涯賃金の平均額がそれくらいですからね。
まあ終身雇用と年功序列は崩壊していますし、非正規での雇用も増えていますから一概に2億円とは言えないかもしれません。
しかしあなたが提示する履歴書を見て企業が採用を決めるわけですから、
「年収 × 勤続年数」の価値が履歴書に込められていると言ってよいでしょう。
就職活動に臨む学生の皆さん、どうか考えてみてください。
あなたの書いた履歴書には、会社に2億円支払わせるだけの価値がありますか?
自分が会社に何ができるかを考えよう

国があなたのために何をしてくれるのかを問うのではなく、
あなたが国のために何を成すことができるのかを問うて欲しい。
米国第35代大統領、ジョン・F・ケネディの言葉です。
この言葉は、実に様々な事に当てはめることができると思います。
就職活動されるのなら、「国」を「会社」いう言葉を入れ替えて考えてみてください。
給料、勤務時間、休日、福利厚生・・・
確かにそれらは大切です。気になるのもよくわかります。
しかし同時に、会社があなたに何を与えてくれるかだけでなく、
あなたが会社のために何ができるかについてもよく考えてみてください。
その会社のことをよく調べ、自分の強みを把握し、あなたの力を個性をどのように役立たせていけるのか。
Tさんに抜け落ちていた視点はここにあると思います。
おわりに
Tさんは就職活動を舐めすぎていました。民間企業への就職は、大学院進学や公務員、教職課程といった、選択肢を放棄した人間が選ぶ”逃げ”では決してありません。
就職活動を大勢の学生が取る行動だと侮り、
教員免許を諦めた自分を心の底では恥じ、
就職活動の流れを無視して自分のやり方に固執し、
履歴書の価値も企業の採用コストも一切考えずにただ選考にのぞみ、
あまつさえ都市伝説にすがって一発逆転を狙った。
自信はないくせに他人を見下し、相手のことを考えず、プライドだけは異様に高く、楽な方へと身を委ねたTさんの心根こそが全ての元凶です。
逆に、
就活生の動きを敏感に察知して情報を交換し合い、
民間企業への就職は自分自身が決めた選択だと胸をはり、
周囲の意見や状況を見ながら柔軟にやり方を変えていき、
時間とコストを割いてくれている企業と担当者に敬意を払い、
飛び交うデマや怪しい情報に踊らされずに就職活動を行っていれば、
Tさんの未来ももっと違ったものになったかもしれません。
就職活動に失敗したらそこで人生が終わりとは言いませんが、
新卒一括採用が偏重されている日本において、新卒後に勤める会社があなたの人生を左右することは紛れもない事実です。
どうかデマや怪しい情報、誤ったやり方に囚われることないよう、切に祈ります。
くれぐれも都市伝説など真に受けて、踊らされないようにしてください。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。