政敵や国家間の争いなど、裏で呪術師が暗躍している。
そのような話は歴史的にいくつも見ることができます。
たとえば日本だと、蒙古襲来のときに密教僧や陰陽師を全国からかき集め、祈祷をもって神風を吹かせたエピソードが有名です。
第二次世界大戦においても、
英国はアレイスター・クロウリーを、
ドイツはディートリヒ・エッカルトとカールハウスホーファーという呪術師を擁し、
近代兵器とともに呪術でも相手国を攻撃していた話が知られています。
大きな敵に立ち向かうときに呪術を用いる。
これは現代でも行われているのです。
JKS47こと呪殺祈祷僧団と名乗る謎の集団。
2015年の話でちょっとネタは古いのですが、
その時にこのブログはまだありませんでしたし、オカルトに興味のある人には知っておいて欲しい話ですので、記事にさせていただきます。
公害病の被害者のために立ち上がった企業主呪殺祈祷僧団
時は1970年(昭和45年)。経済成長の陰で急速な工業化にともない、企業が有機毒物などを無責任に垂れ流し、
それらを原因とした水俣病やイタイイタイ病、四日市喘息といった公害病が問題となっていた時代のことです。
重篤な患者が後を絶たない中、
原因の煤煙を垂れ流している会社の社長は責任を認めず、被害者への謝罪も保障もしないと開き直り、
工場廃水が病気の原因とされた会社の社長や幹部も、同じく責任を認めませんでした。
被害者の悲痛な訴えに全く耳を傾けることのない企業主たち。
そんな中立ち上がったのが、公害企業主呪殺祈祷僧団と名乗る密教僧の団体でした。

「本日ここに壇上を結界し、大聖不動明王を勧請して悪鬼全国公害主に鉄槌を下す」
「仰ぎ願わくば、この法をもって公害企業主、地獄冥府に落ちん事を」
苦しんで亡くなった被害者たちの恨みを込め、公害企業の経営者たちを妙法の力で呪い殺すことを目的にした総勢8名の僧団です。
僧侶4人在家4人の、真言宗と日蓮宗の混成部隊。
彼らは黒地に白で「呪殺」と染めた幟(のぼり)を持ち、公害企業の門前で数時間にもおよぶ「降伏法」を執り行いました。
一ヶ所の公害企業での祈祷が終われば次の公害企業へ赴き、合わせて3ヶ月もの期間に渡って各公害企業を呪詛して周ったのです。
行脚は日蓮宗方式で題目と太鼓を、呪殺祈祷は真言宗の儀軌に則って行われました。
その結果・・・
およそ1年後には対象となった公害企業の幹部が、病気や事故、自殺などで死に至り、
中には社長や株主が死亡した企業もあったのだとか。
これは噂ですが、20人もの人が亡くなったのではないかと言われています。
不気味で物騒に思える呪殺祈祷僧団ですが、警察の取り締まり対象になることはありませんでした。
「不能犯」
法律では「呪っても人を殺すことはできない」と、人の死と呪いの因果関係を認めていません。
他人に呪いをかけて死に至っても、因果関係を証明できない以上、罪に問うことができないのです。
また、呪殺祈祷の対象とした「公害企業主」という言葉も、この表現では個人を特定したものとは考えられないため、名誉棄損にすらなりませんでした。
行脚や祈祷もデモではなく宗教行為と見なされ、取り締まりの対象にはできなかったのです。
当然、仏教側からは「慈悲を根本にする仏教が呪殺とはなんたることか」という批判が上がり、呪殺祈祷僧団に参加した僧が処分を受けています。
ただし真言宗は、「教義的に問題無し」としてお咎めはなかったとか。
科学的に呪いの存在は認められていないので、呪殺祈祷僧団の呪術と公害企業主の死の関係性を立証することはできません。
ですがこの事件は「呪詛」を行う存在が確かにいることを広く世に知らしめました。
そして45年の月日が経ち・・・
呪殺祈祷僧団が再び姿を現したのです。
平成に甦った呪殺祈祷僧団四十七士(JKS47)
ある日、次のフライヤーがネット上に流れました。
呪殺祈祷僧団(JKS47)再結成!
呪殺祈祷会「死者が裁く」
8月27日(木)午後3時より経産省前テントひろばにて「祈祷会」を決行
昭和に結成された呪殺祈祷僧団が45年の時を経て再結成されたというのです。
そして予告のあった2015年8月27日午後3時。
東京・霞が関の経済産業省庁舎前には、読経の音が高らかに響きました。
「呪殺」「死者が裁く」と大きく書かれた黒い幟を掲げ、
蝋燭を灯し、経文が書かれた太鼓が打ち鳴らされる。
そうして、黒い法衣を身に纏った7人の僧侶による呪殺読経が始まったのです。
誰かを「”呪”い”殺”す」気はないらしい・・・
youtubeより画像キャプチャ
昭和の呪殺祈祷僧団は、公害病に苦しんで亡くなった被害者たちの恨みを込め、公害企業の経営者たちを妙法の力で呪い殺すことを目的にした集団でした。
対して平成の呪殺祈祷僧団はというと・・・
打倒安倍政権
安保法制反対
脱原発
を掲げる集団のようです。
日刊SPA! やJCASTニュース に詳しく書かれていますが、ここでは一部引用させてもらいながら概要を掴んでいただけたらと思います。
(クリックすると外部リンクへ飛びます)
読みやすくするため、改行や太文字への変更を加えてあります。
やがて、黒い法衣を身にまとった7人の読経が始まる。
本格的な法要の体だが、それはさほどおどろおどろしくなく、「街頭劇」のような印象。
それもそのはず、「JKS47」の仕掛け人は、劇作家にして、僧侶の上杉清文氏。
日刊SPA! より引用
「僕がやりたいことは、他人を『呪』い、『殺』すことではないんですよ。
『殺』の語源は『呪霊をもつ獣を撃って己に向けられた呪詛(じゅそ)を祓う』こと。
僕がこれを始めたきっかけは、福島第一原発事故で放射能を呪殺したい、放射能を呪いで滅却したいという思いからです。
もし本当に人間を呪い殺すつもりなら、秘密裏に行わなければならないでしょ」JCASTニュース より引用
しかし、J-CASTニュースの取材に応じた同団体の中心僧侶の1人によれば、
「呪殺とは、殺人ではありません。神仏や死者の裁きを祈念し、他者や我々自身の煩悩を滅殺することを指します。ですので、特定の団体や個人を指して呪殺祈祷を行っているわけではありません」という。
同氏はあわせて、「『呪』という字は『祈る』という意味で使っています」とも語った。
――「JKS47」というネーミングも反感を買っているようです。
「『JKS47』は『赤穂浪士四七士』からなんですが、『乃木坂46』『AKB48』があるのに、なぜ『47』がない。その隙間を埋めて、共闘して『JKS47』が成立するのではないかなと(笑)。
仲間は同意してくれないけど、“遊びの精神”があったほうがいいとボクは思うんです」
――今後、どのような行動をされていくつもりですか?
「末井昭さんのように在家でもいいんですけれど、いずれ四七人の僧団にしたいとは思っています。
今日は『神7』ならぬ『仏7』みたいなもの。そんなことを言っているのは、ボクなんですけれどね(笑)。
それに、近いうちに川内原子力発電所には行きたい。ただ、普通の反原発運動の人たちは「呪殺」と黒旗をなびかせて練り歩くボクらとは、連動してくれないかもしれないけれどね」
上杉さんの友人であり、呪殺祈祷にもサックスで参加した編集者・エッセイストの末井昭さんは、
「通常のデモだけじゃなく、このように少し変わった形でアピールした方が、見る人もギクッっとする。
JKS47という略称とか、ちょっとキャッチーでお茶目な部分もあるけど、本物のお坊さんがやっているから、全部が全部ふざけているわけじゃない。その塩梅が絶妙だと思う」
と語った。
つまり JKS47こと平成の呪殺祈祷僧団は何かというと、
劇作家の上杉清文氏が仕掛け人
『呪』という字は『祈る』という意味
ある特定の個人ではなく、放射能や安保法制を呪殺することが目的
JKS47の名称はキャッチーでお茶目な”遊びの精神”
本物のお坊さんを使って「安倍政権退陣」「売国奴に死者の裁きを」というビラを配りながら祈祷するのが「少し変わった形でアピール」なのだそうです。
JKS47 の所業を呪術的に考察してみる

オカルトブログを名乗っている手前、JKS47の祈祷会を呪術的に考察しておきましょう。
上杉氏がインタビューで「デモ」「アピール」という言葉を使っている通り、
この祈祷会が完全なパフォーマンスであることは明らかです。
密教で調伏(怨敵や悪魔などを打ち倒す)するときには、
不動明王
降三世明王
軍荼利明王
大威徳明王
金剛夜叉明王
といった憤怒相の明王の修法を行います。
対して祈祷会で唱和されていたのは観世音菩薩普門品第二十五。
このお経は法華経の中の一章で、
私たちが人生で苦難に遭遇したとき、観世音菩薩の慈悲の力を信じてその名前を唱えれば、観音様が必ず救ってくれる
と説いているものです。
法事や写経などで目にすることも多いポピュラーなお経です。
断じて呪いに使用するお経ではありません。
護摩を焚いてる様子もありませんし、呪詛をかけるつもりはさらさらないのでしょう。
中身のない行動には、それ相応の中身のない結果が導き出されるだけ。
事実、祈祷会から3年経った今も安倍首相は職務をこなしていらっしゃいます。
呪いは祈りの意味だとかゴチャゴチャ言ってますけど、
慈悲の力でお救いいただく観音様のお経をもって「呪殺」とするのは不謹慎にもほどがあるかと・・・
そもそもこのお経には、
呪詛諸毒薬 諸欲害身者 念彼観音力 還着於本人
「呪いや毒薬のために命が危険にあっても、この観音の救いを心から念ずれば、殺そうとした人にそれらが戻っていく」
と書いてあるんです。
もしかして意味もわからずお経をあげているのでしょうか?
そもそも、この人たちは本当にお坊さんなんですかね・・・?
政権に不満があるなら選挙へ行きましょう

現政権に不満があるなら、まずはちゃんと選挙に行きましょう。
本物(これも疑わしいけれど)のお坊さんを使って「呪殺」を掲げるパフォーマンスをする必要は本当にあるのでしょうか。
キャッチーとかお茶目とか遊びの精神とか、
若者に人気のアイドルに擦り寄ってみるとか、
そういうの一切合切やめてもらって
政治活動をするならせめて真面目にやってほしいです。
呪殺とか、一般人の感覚ならドン引きです。
仏教側にも
公害企業主呪殺祈祷僧団にも
現政権にも
霞ヶ関周辺の人たちや警官の人たちにも
脱原発や安保法案反対の活動に取り組んでいる人にも
全方位に迷惑をかけている気がします。
自分が「脱原発」「安保法案反対」の意見なら、同じ方針の政党を支持すればよいでしょう。
お手伝いするとか応援するなどして、議員さんを直接支援する方法もあります。
支持政党や応援したい議員がいないなら、いっそ自分が議員に立候補することもできます。
衆議院議員なら満25歳以上、
参議院議員なら満30歳以上で、日本国籍を持つものなら被選挙権を得ることができますからね。
政治を語るなら、法律や社会通念に則った方法でお願いしたいものです。
いい大人なんですから・・・
ちなみにJKS47は現在も活動しているようです。
公式のHPがあり活動内容や記録を見ることができます。
HPへのリンク?そんなもの張りませんよ。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。