年賀状や生まれ年で馴染み深い「十二支」。
十二支に当てられる動物のうち、ほとんどが実在している動物です。
ですがその中に1つだけ実在しない架空の動物が含まれていますね。
「辰」に当てられた龍です。
年賀状の画像も、他の十二支はその動物だと一目でわかる絵や写真が印刷されたハガキが送られて来ますが、
「辰」だけはドラゴンや恐竜、はてはタツノオトシゴの画像やイラストで送られてくることもありますね。
なぜ誰も見たことのない架空の動物が十二支に選ばれることとなったのでしょうか。
今回の記事では十二支の「辰」、龍の正体は何なのか調べてみました!
十二支はもともと動物とは関係がなかった

十二支の始まりは中国の「殷」の時代、紀元前1400年頃に発生したと言われています。
十二支とは本来12年で天を一周する木星の軌道上の位置を示す、「年」を数えるための数詞でした。
十二支の
「子 丑 寅 卯 辰 巳 午 未 申 酉 戌 亥」
の文字がもともと何を表すものだったのかはわかっていません。
一説には草木の成長における各相を象徴したものとされ、十二支の文字と動物とは関係がありませんでした。
それではなぜ十二支と動物が組み合わされたのでしょうか。
後漢の文人・王充が民衆に十二支を浸透させるため、覚えやすくて身近にいる動物を割り当てて文献を書いたことが始まりだと言われています。
それではなぜ架空の生き物である「龍」が辰の文字に割り当てられたのでしょうか?
もしかすると中国において龍とは身近にいる動物だったのでしょうか?
龍は”恐竜”の化石

十二支の起源である中国において「龍」は麒麟、鳳凰、霊亀とならぶ四種の霊獣の一つでした。
そして龍は中国の皇帝のシンボルと考えられていたことから、四種の霊獣の中でも最も力があるとされていました。
竜顔、袞竜、竜影、竜袍など、王にまつわる言葉には竜の文字が入っていることがあります。(「袞」は首をかしげた龍のこと)
このことから、古代の中国人は龍を想像上の生き物ではなく実在する動物と考え、身近な動物としてとらえていたから十二支に取り入れたのではないか、とする説があるのです。
龍が実在すると信じられていたとしても、生きた龍の姿を目撃した人はいなかったでしょう。
ですが中国には古代から「竜の骨」とされるものが実在し、それを砕いたものが万病に効く貴重な薬として流通していました。
『易経』によると、紀元前800年頃から「竜骨」が見つかることは吉兆だと考えられていたことが伺えます。
竜骨とはおそらく恐竜の化石のこと。
中国は世界的にも恐竜の化石が多く発見されることで知られています。
時には恐竜の化石が全身の骨格をとどめたまま発見されたこともあったでしょう。
鳥とも爬虫類とも言えない巨大な生物の化石を見て、
天に昇り空を翔け、鳴き声で嵐や雷雲を呼ぶ
そんな神聖な獣の姿を思い浮かべたのかもしれません。
ちなみに私は恐竜や海棲大型爬虫類の一部は絶滅を免れ、近現代まで生き延びた種がいるのではないかと考えています。
そうした恐竜と人類との接触を記録したと思しき謎の彫刻や壁画、絵画など が世界中で見つかっているからです。

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龍の正体は古代の巨大クロコダイル”マチカネワニ”

龍のモデルとなったとして恐竜のほかに、龍の正体はワニではないかとする説があります。
十二支は中国が発祥ですから、日本を始めとするアジアの文化圏に十二支があるのは想像がつきます。
ですが意外なことにロシアやベラルーシ、イラン、アラビアにも十二支はあるのです!
十二支はアジアだけではなく東ヨーロッパにもあります。
おそらくはモンゴル帝国が領土を拡大した際、十二支の文化も広まっていったのでしょう。
DNA分析によるとハンガリー人はコーカソイド(白人)に分類されますが、わずかにモンゴロイド特有のDNAの型が混じっているらしいです。
十二支は身近な動物が割り当てられたものなので、国によって微妙に動物が異なります。
例えば日本では亥に「猪」が当てられていますが、ほとんどの国では亥は「豚」とされています。
その他にも、
タイでは羊が山羊に、
ベトナムでは牛が水牛、兎が猫、羊がヤギに、
そして日本では龍となっている辰がアラビアではワニ、イランではクジラとなっているのです。
事実、中国にはヨウスコウアリゲーターという2メートルほどのワニが生息しています。
でも2メートルくらいのワニだとサイズ的に龍とは言えないような・・・
ここで興味深い話があります。
ワニ類研究家である青木良輔さんは著書『ワニと龍』の中で、
「龍とは実在の動物であり、古代中国にいた巨大なクロコダイルのことではないか」
という説を展開しています。
青木さんによると、中国の古典には「鼉」と「 龍→蛟→鰐」の2種類のワニがいたといいます。
「鼉」は先ほど紹介したヨウスコウアリゲーターのことで人畜無害のおとなしいワニだそうです。
それでは「 鰐」とはどんなワニなのでしょうか。
「鰐」とは虎をも襲うと畏れられた、10メートルを超える巨大なクロコダイルだったというのです。
その巨大なワニの仲間の化石がなんと日本で見つかっています。
大阪府豊中市・待兼山にある大阪大学の構内で見つかったマチカネワニです。
ウィキペディア「マチカネワニ」 より画像引用
マチカネワニとは、およそ45万年前の日本に生息していたと考えられている巨大なワニです。
昭和39年(1964年)に大阪大学豊中キャンパスの工事現場にて、化石採取に来ていた人が骨片の化石を見つけました。
それを大阪市立自然史博物館に持ち込み鑑定を依頼したところワニの化石であることが判明。
その後の発掘調査の結果、全長7メートルほどの巨大なワニの化石が発掘され、発見現場の地名からマチカネワニと名付けられました。
これほど巨大なワニの化石が完全に近い姿で見つかったのは全国でも例がなく、ワニの生態を明らかにする上で、非常に貴重な資料となっています。
ちなみに豊中市のキャラクター「マチカネくん」は、このマチカネワニをモデルとしています。
豊中市ブログ「マチカネくんのとよなか草子」 より画像引用
古代の人々はマチカネワニの化石、あるいは生きて動いている姿を見て、十二支に龍を加えたのかもしれません。
昔の人は「龍神」の姿を見ることができた?

スピリチュアルの世界で、ここ数年前から話題になっている神様がいます。
「龍神」
文字通り龍の姿をした神様で、うまく御縁をつなげることができれば人生を成功に導く手助けをしてくれると言われています。
話によると龍神とはエネルギー体で、
神社や神聖な場所のほかにも私たちのまわりにもたくさん存在しており、
サポートする人間を探しているのだそうです。
龍神とつながると
願い事が叶いやすくなる
物事のタイミングがよくなる
素敵な出会いに恵まれるようになる
お金の循環が良くなる
といった、ひたむきに努力する人の手助けをしてくれると言われています。
龍神とつながる方法や仲良くなる方法について書かれた書籍がいくつも出版されており、
SNSで「#龍神」「#龍雲」と検索すると、龍の姿に見える雲を撮った写真がたくさん出てくることからも、人々の関心の高さが伺えます。

龍神様と御縁でつながると、龍を思わせる不思議な雲や光で現れるらしいです
気の流れで吉凶を判断する風水では、大地を流れる気のことを「龍脈」といいます。
また、私たちが暮らす日本列島は見方によっては天に昇る龍の姿に見えます。
人によっては龍神の存在を感じたり、声を聞いたりすることができるとのこと。
もしかしたら昔の人の感覚は現代人よりもずっと鋭敏で、
自然の中に流れる気のエネルギーや、努力する人間を見守り助けてくれる存在のことを、
「龍」という姿で身近に感じていたのかもしれません。
おわりに
十二支の中で唯一架空の動物である龍。それが何を表しているのか、3つの説を紹介しました。
龍は中国の想像上の動物ですが、おそらくは仏教伝来とともに日本に伝わったと思われます。
日本では古代からあった「蛇信仰」と結びつき、「龍神信仰」として広まりました。
お寺や神社で龍の石像や彫刻をよく目にするので気づきませんでしたが、考えてみれば日本神話には龍は登場しないんですね。
強いて言うなら日本神話に登場する女神、豊玉姫の出産のエピソード。
豊玉姫はワニの姿をした子どもを生んでいます。
このエピソードから、先に紹介したマチカネワニの学名「Toyotamaphimeia machikanensis 」にはトヨタマヒメの名前が入っています。
日本では水にまつわる神様として蛇神と龍神は同一視されていますが、
歴史や宗教学の視点から蛇神と龍神を切り分けて考えていくと、
中国とは違った龍の姿が見えてくるかもしれません。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。