(画像引用元 https://www.youtube.com/watch?v=izauIfJl4II)
おすすめ度

(画像引用元 https://www.youtube.com/watch?v=izauIfJl4II)
『ゴジラ FINAL WARS』より12年ぶりに、日本が製作したゴジラです。
ハリウッドが製作した、1998年のトライスター版、2014年のレジェンダリー版のゴジラを見て、
「いや、違うな…」
と思っていた私としては、素直に純粋に単純に嬉しい限りです!!
私の評価は、トライスター版を☆1つ、レジェンダリー版を☆3つとするなら、
『シン・ゴジラ』は☆5つをつけちゃいます!
ただ、製作側も「エンターテインメント性よりドキュメンタリー性を重視した」とコメントしており、お子さんと見に行かれるなら注意が必要です。
子どもの目には激しくつまらない作品に映るでしょう。
敵の怪獣が出てくるわけでないし。
派手な武器や兵器が登場するわけでもないし。
それから、長年ゴジラのファンをされていた、年配の方にもおすすめは難しいかと。
大まかなシルエットこそファースト・ゴジラの姿を踏襲していますが、設定やデザインは従来のゴジラをリスペクト、オマージュした上で新たに再構成した感じ。
全く別物というより、庵野監督の作風を知らないとストーリーを追うだけで映画が終わってしまうと思います。
逆に、
●平成ガメラ三部作
●エヴァンゲリオン
●庵野秀明
●巨神兵
この辺りの単語を、耳にするだけでテンションが上がる方は、必ずや楽しんで鑑賞できるはずです。
是非劇場に足を運んでください!
[speech_bubble type=”ln-flat” subtype=”L1″ icon=”hiiragi01.jpg” name=”特撮大好き柊ちゃん”]それでは以下ネタバレです!
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あらすじ
東京湾内羽田沖で漂流中の無人の小型船が発見され、海上保安庁が船内に乗り込んだ。その時、突如海面が大きく揺れ、大量の水蒸気が噴出。アクアトンネル構内で走行中の車両が浸水に巻き込まれる。この知らせを受け取った矢口内閣官房副長官、志村内閣官房副長官秘書官は、情報収集に奔走する。
局地的地震か海底火山噴火なのか。
首相官邸・総理執務室では、閣僚らが対策を協議する。
海中に熱源が確認されたため、海底火山の噴火の見解に傾く。
が、矢口はネットの動画から、巨大生物の存在を示唆した。
噴出した水蒸気は浮島周辺で収束するも、海面から巨大な尻尾と思しき物体が現れる。
矢口の推測が立証された。
駆除か捕獲か領海外へ追い出すのか、政府は巨大生物の対処の検討に移行する。
巨大不明生物は水蒸気を噴き上げながら、船舶・橋梁を破壊し呑川を遡上、蒲田に上陸。
人々がパニックに陥る中、障害物を壊しながら、巨大不明生物は品川方向へと進行していく。
状況の把握、武力攻撃・防衛出動の是非、住民の避難、情報の開示…
対応に追われる政府。
品川湊・船着場で巨大生物は突然停止。
そして今まで後脚と蛇行で進んでいた体を立ち上がらせ、急速に体の構造を陸上生物へと変化させる。
その急激な変化はまさに進化である。
逃げ遅れた住人がいるため、攻撃ができない対戦車ヘリコプター隊。
すると巨大不明生物の背中が赤く発光し始め、咆哮の後に向きを変えると、東京湾へと去って行った。
この巨大不明生物の存在は牧悟郎という人物により予言されていた。
元・城南大学統合生物学教授で日本から追放されるように米国に渡り、エネルギー関連の研究所に帰属していた老人である。
冒頭に羽田沖に漂流していた無人の小型船は、牧の所有物だった。
その小型船には封筒が残されており、中の書類には
「私は好きにした。君らも好きにしろ」という謎のメッセージと、
“呉爾羅”という単語が記されていた。
呉爾羅とは、牧の故郷である大戸島で神の化身を意味する言葉だという。
巨大不明生物はゴジラと命名された。
再びゴジラが相模湾に出現、鎌倉に上陸。
さらに巨大化したゴジラに、首相は武器の使用を許可する。
首都防衛、否、日本の生き残りを賭けた戦闘が幕を開けた。
これで大体3分の1くらいです。
ゴジラ デザインと造形

(画像引用元 https://www.youtube.com/watch?v=M89VLZgo1Vg)
あらすじのところで「進化」という言葉を使いましたが、急激な突然変異を繰り返すゴジラは、作中で第四形態まで姿を変えます。
第一形態
登場時の形態です。泳いでいるシルエットだけ確認できます。
オタマジャクシのようなイメージでデザインされたそうです。
第二形態
上陸時の形態です。サンショウウオを思わせる茶色い粘膜状の皮膚をしており、後脚を使い、体を蛇行させて這いずるように進む。
頭部は古代魚ラブカをイメージしたとのこと。
喉のあたりにエラらしき器官があり、呼吸(?)する度に血のような赤い体液をまき散らす。グロい。
まん丸の目には知性が感じられず、コミュニケーションをはかるのは無理だと一目で感じさせます。
時速13キロとのことなので、頑張れば自転車で逃げ切れますね。
第三形態
第二形態と第四形態の中間のデザインといった感じです。第二形態の前脚部分が割れて小さな腕を形成し、体が膨張。
体表はまだ茶色いままで、二足歩行になります。
ですが足元がヨタヨタしていて、何をしだすかわからない危ない印象を受けます。
第四形態
再度上陸時の、本作のゴジラ最終形態。前の形態よりはるかに大きく、黒く変化した皮膚から覗く赤い体組織は、冷えた溶岩を突き破るマグマのような、増殖を繰り返す細胞のような印象を与えます。
生物の進化の頂点に立つゴジラは、生物を捕食する必要がないためひどい乱杭歯。
そしてゴジラを捕食する生物もいないため耳も存在しません。
尻尾を良く見ると、顔のような歯のような、本来あるべきでない組織ができかかっています。
海から上がった巨大不明生物が突然変異を繰り返し、その結果、ファースト・ゴジラのようなフォルムに近づいていった、という設定です。
ゴジラの攻撃と言えば口から炎や熱線を吐き出すのですが、本作のゴジラはさらに凶悪。
例えるなら、巨神兵が拡散ビーム砲を連射するような…
おそらく、今までの作品で一番手がつけられないです。
スーパーXを投入しても瞬殺でしょう。
演出
ゴジラという災厄が日本を襲う。こんな荒唐無稽の設定を補強するため、リアリティへの追及がすさまじく、自衛隊、政界や官僚の世界、状況設定、人物の服装や話す言葉、仕草、美術にいたるまで徹底的にリサーチされています。
パンフレットには、自衛隊に撮影協力を得るために
「防衛大臣と繋がっている広報の大臣官房を窓口にして、陸、海、空の各自衛隊幕僚幹部の中にある広報に話を通し、その広報から各駐屯地の部隊に撮影したい撮影許可の承認印をもらい(以下略)」
・・・
え~つまり、煩雑な手続きと綿密な打ち合わせ、見学とリサーチを重ねて作り上げた映画だということです。
想像するだけで気が遠くなりますね…
他にもこんなエピソードが。
首相官邸には二度見学に行っているそうですが、執務室は見せてもらえなかった。
そこで美術さんは、安倍首相のブログの写真を頼りに、背景を切り貼りして執務室を再現したそうです。
演技の事はよくわからないのですが、着ているスーツ、ネクタイ、ネームプレートの有無や位置にいたるまで、各登場人物を意識して考えていったそうです。
本当にすごい作り込みです!
音楽
ゴジラと言えば伊福部昭氏の音楽ですよね。ハリウッド版はもちろん、ミレニアムシリーズから使われなくなってしまった氏の音楽ですが、本作では「伊福部音楽の啓蒙」という形でゴジラのテーマを聞くことができます!
またスクリーンで見れる日が来るなんて…
感涙です!
本作で音楽を担当されているのは鷲巣詩郎氏。
庵野監督とは、エヴァンゲリオンでタッグを組んでいますね。
監督の思いつきとのことですが、劇中でエヴァのテーマが流れます。
流れた瞬間、館内で明らかに小さなどよめきを感じましたよ。
そしてゴジラが東京を破壊し焼き払う場面で流れる、独唱と合唱を織り交ぜたオリジナルの楽曲は、
破壊、敗北、喪失、悲壮、絶望
これらの感情をより強く喚起するインパクトある演出となっています。
あとがき
特撮、SF、正義のヒーローと姿を変えてきたゴジラシリーズですが、ビキニ環礁での水爆実験が、第一作のゴジラを着想するきっかけでした。核や放射能で巨大化した怪獣が再び日本を襲う。
第一作のゴジラのイメージには、頭がキノコ雲に見えるデザインも考えられていたとか。
ゴジラは、敗戦国である日本において反原爆・反戦のメッセージだったのです。
(それゆえ、ハリウッドがゴジラを持って行った理由が私には分かりません)
本作でも放射能をまき散らすゴジラを脅威とし、ゴジラ殲滅のために熱核兵器を使用すると決定した多国籍軍に最後まで抵抗する人々の姿が描かれています。
ゴジラが破壊した街の光景に
破壊された街から避難する300万を超える人々の姿に
3.11を連想した人も少なくないのではないでしょうか。
本作にはゴジラがバトルする敵の怪獣は出てきません。
さりとて、ゴジラを倒すための未来的・SF的な武器や兵器も登場しません。
ゴジラという『災厄』に最後まで立ち向かった人々の姿を、リアルに詳細に丁寧に、作り込み描いていった作品です。
娯楽ともエンターテインメントとも異なり、現在の立場から原点に立ち返って製作された良作だと断言します!